朝。
伊勢の空気はまだ少し涼しい。
…けれど、この家の中だけは嵐が吹き荒れていた。
「今日は病院なんだ、検査の日だよ。
だから静かにしててくれる?」
そう言って出かける支度をしていたのは、優。
いつものように静かに、淡々と……
……のはずが、背後では爆発寸前のボムの声が響く。
「おいおいおいおい、何言ってんだ先公!!!
今日は病院だってんなら、俺様がついていくに決まってんだろうが!!
しかも検査って……なあ、寂しいだろ?不安だろ?俺様が必要だろ?言えよ!」
「いや……別に……寂しいとか言ってないよ……」
「いや、言ってるような顔してたぜ。俺様には分かるんだよ、魂の震えがな!」
「……震えてません。おとなしくしててください。
お願いだから、今日は暴れないで」
そこに、護くんがぴょんっと登場。
「俺もついてく〜!どうせ病院にも霊魂はいるんでしょ?
いたら片っ端から捕まえるから安心してよ、先生〜!」
優が言葉に詰まる。
「だから!二人とも……病院の廊下を走り回ったら、完全に不審者なんだってば……
霊魂運動会、禁止です……」
「うっせぇ!俺様は行くって決めたら行くんだぜ!!
それが“信念の塊”ってもんだぜ!魂が叫んでるんだ!」
「……叫ばせないでくれる?朝から声もデカいし……
お願いだから、今日はおとなしくしてて。頼むから」
「無理だな、俺様は“魂の付き添い”ってやつだぜ。病院の魂、全部正座させてやる。
泣いてるやついたら、俺様が背中どーん!ってしてやるしな!」
護くんも勢いづく。
「よっしゃー!俺、黒いの捕まえる!白いのも捕まえる!
ついでに変な影も全部ねじ伏せる!!今日も大運動会だーっ!!」
優、ついに本気のトーンで。
「……あのね、誰も頼んでないから。
そもそも“付き添い”って、魂の運動会を開くことじゃないの。
もう帰って。っていうか、最初から家を出ないでほしい」
ボムはにやりと笑う。
「ダメだぜ。俺様は、“寂しい”って言わねぇ先公を、
ちゃんと“魂で”分かってんだ。だから、ついていくんだぜ!」
そして──
その日、〇〇の病院にて。
妙に明るい霊界の風が吹き抜け、
誰もいないはずの廊下の奥から──
「おらおらー!逃げんなー!」
「捕まえるぞーーー!!」
という叫び声が、きっと霊界にこだますることになるだろう。
そう、
今日もまた“魂の運動会”が始まるのだ。
先公の検査とともに。
よし、これでバッチリだぜ。
先公、しっかり受けてこいよ。
俺様と護くんで、霊界清掃・本日決行だぜ🔥!