
入口の引き戸が、
ス…**と静かに動いた。
音はほとんど無い。
ただ、空気だけが揺れた。
先公の店に、彼女が現れた。
疲れたような瞳。
けれど来た、その一歩が強かった。
その瞬間だった。
黒い影が、先公に向かって飛びかかった。
気配も、音もなく。
ただ“憎悪”だけが先に届く。
「堕ちろ……引きずり込む……」
人間には見えない、
だが確かにそこに存在する“悪魔”が、
先公へ一直線に襲いかかる。
◆ 時間がねじれた
空気が、
一瞬だけ 裂けた。
黒いジャケット、黒いハット。
太いチェーンが揺れ、
光が斜めに走る。
ボムが立っていた。
登場の気配すらない。
まるで、最初からそこにいたように。
「へぇ……先公狙いか。
そりゃ死にに来たようなもんだぜ。」
影が叫ぶ。
「離せ!!こいつの光を――」
ボムの声が被さる。
低く、冷たい。
「光を汚す奴は、俺がぶっ潰す。」
◆ 一瞬の制裁
ボムの足が一歩、床を踏む。
その音と同時に、空気が爆ぜた。
ドンッ!!!
影が壁に叩きつけられ、
軋み、裂け、黒の煙となる。
さらに一歩。
ボムはしゃがみこみ、
影の顔を掴んだ。
優しげな顔、
なのに、瞳が刃。
「二度と来んな。
ここは先公の場所だ。
……潰すぞ。」
握りつぶすようにして、
影は散り、消えた。
彼女の頬に、涙が一粒。
理由の分からない涙。
ただ、心が軽くなる。
◆ ボムは笑う
肩を回しながら、
少しだけ頬を歪めて笑う。
「まったくよ、
お前を狙うってことは
どんだけ光ってんだ先公。」
そして彼女に向かって、
優しいのに不良みたいな声で言う。
「安心して座れよ。
ここはもう結界だ。
悪魔より、
俺のほうが怖いぞ。」
最後に、ボムはこっそり言う。
「この店に入った時点で、
お前は“守られてる側”なんだぜ。」