――なぁ先公。
もう年の瀬だぞ。
なんか言うことねぇのかよ。
「……うるさいな。年末だからって騒ぐな」
ほら来た。
開口一番それかよ。
相変わらず冷てぇなぁ、先公は。
でもな、聞いてくれだぜ。
今年はな、ちょっと違うんだ。
泣いた人、めちゃくちゃ多かった。
ほんとに多かった。
笑った人より、泣いた人の方が多かったんじゃねぇかってくらいだ。
でもな、
それでもみんな生きてるんだぜ。
――それって、すげぇことじゃねぇか?
「……確かにな。
だが、感傷に浸るにはまだ早い」
はいはい、またそれだ。
どうせ言うんだろ?
“感情論だけじゃ前に進めない”とかさ。
でもな先公。
泣くことも、立派な前進なんだぜ。
悔しくて泣いた夜。
情けなくて布団に顔埋めた夜。
誰にも言えず、声殺して泣いた夜。
ああいう夜があったから、
今こうして踏ん張れてるんだ。
「……それは否定しない」
だろ?
だから今日はな、説教じゃなくて、
ちゃんと“労う日”にしようぜ。
今年はさ、
本当にいろんな人が頑張った。
誰かに裏切られても、
誰にも理解されなくても、
それでも投げ出さなかった。
自分を守るために、必死だったんだ。
「守ることは、逃げじゃない」
お、珍しくいいこと言うじゃねぇか先公。
「……お前に言われたくない」
はいはい、そう来ると思ったぜ。
でもな、
俺はちゃんと言いたいんだ。
“よくここまで生きたな”って。
誰に褒められなくてもいい。
誰に認められなくてもいい。
でも、自分だけは、自分を見捨てるな。
それだけで十分だ。
今年はな、
「頑張れ」より
「もう十分だ」って言葉が似合う年だった。
だから今日は、頑張らなくていい。
気張らなくていい。
ちゃんと息して、ここにいるだけで合格だ。
「……甘やかしすぎだ」
うるせぇ。
たまには甘やかさないと壊れちまうんだよ。
だいたいな、
あんたも分かってるだろ?
人はな、
“誰かに分かってもらえた”って思えた瞬間に、
もう一回立ち上がれる生き物なんだ。
だから今日は、
俺が言う。
――よくやったな。
――本当によく生きたな。
来年はな、
もっと笑っていい。
もっと手を抜いていい。
もっと「自分」を大事にしていい。
「そんな都合よくいくか」
ああ、いかねぇさ。
でもな、目指すくらいはいいだろ?
目指すだけならタダだ。
それにさ、
2026年は、少し風向きが変わる。
重たかった空気が、
ほんの少し、軽くなる。
信じるかどうかは任せる。
でもな、オレは信じてる。
あんたが、
ちゃんと報われる日が来るってことを。
さぁ、今日はもう休め。
泣いてもいい。
笑ってもいい。
何も考えなくてもいい。
明日また、起きればいいんだ。
……で、先公。
最後に一言くれよ。
「……今年も、よくやったな。
それで十分だ」
だとよ。
ほら、聞いたか?
これで今日は終わりだ。
また明日、生きようぜ。
ボムはここにいる。
逃げねぇからな。
――終わりだぜ。
と思ったらだぜ!・・・・・・・!
〜そして、最後に“あの人”が現れる〜
……って、ここまで調子よく喋ってきたがな。
実は、ここからが本番だぜ。
「ボム」
――その声で、空気が変わった。
あ、やべ。
この声は……。
「……いい加減にしなさい」
出た。
さくら先生だ。
さっきまでの賑やかさが、
一瞬でピタッと止まる。
背筋が、勝手に伸びる。
「人の心を代弁するのはいい。
気持ちを言葉にするのも、悪くない。
でもね……」
……来るぞ。
「あなた、自分のことを棚に上げすぎ」
うっ……。
「人の痛みを語る前に、
自分の弱さ、ちゃんと見てる?」
ぐさっ。
それは一番刺さるやつだ。
「強がって、笑って、ふざけて、
それで“ボムらしさ”だと思ってるでしょ」
……図星だ。
「でもね、それ、逃げでもあるのよ」
……はい。
何も言えません。
「本当は、あなた自身が一番泣きたいくせに。
誰よりも傷ついて、
誰よりも人の気持ちを受け取って、
それを全部笑いに変えて誤魔化してる」
……ちくしょう。
言い返せねぇ。
「優しい人ほど、自分を後回しにする。
だから、あなたは“ボム”なんでしょう?」
……。
「でもね」
そう言って、少しだけ声が柔らいだ。
「それでも、あなたはちゃんと伝えてる。
不器用だけど、逃げずに言葉にしてる。
だからこそ、みんなあなたの話を聞くのよ」
……なんだよ。
褒めるなら最初からそう言えっての。
「勘違いしないで。
褒めてるんじゃないわ。
“認めてる”の」
……ああ、もう。
反則だろ、それ。
「だからね、ボム。
今年はもう、十分やった。
誰かのために、ちゃんと立ってた」
……。
「来年は少し、自分のために生きなさい。
それが出来ないと、また同じところで苦しくなるわよ」
……はい。
その一言で、全部抜けた。
肩の力も、意地も、見栄も。
正直、泣きそうになった。
「分かったら、今日はもう終わり。
あとは、ゆっくりしなさい」
……了解だぜ、先生。
――なぁ、聞いてくれ。
オレ、今日やっと分かった。
強がらなくてもいいんだって。
ちゃんと弱くても、受け止めてくれる人はいるんだって。
だからさ。
これを読んでるあんたにも言う。
今年は、よく頑張った。
本当に、よく耐えた。
よく生きた。
来年はな、
もう少し楽にいこうぜ。
泣いてもいい。
立ち止まってもいい。
カッコ悪くてもいい。
それでも、ちゃんと前に進んでる。
……じゃあ、今日はここまでだ。
またな。
ボムはここにいる。
逃げねぇし、置いていかねぇ。
――大晦日!イッチョ大暴れするか!
『コラッーボム!』 ◎ ▽ ■ ▲ ☆彡 ・・・・・・・・。。。。。。。。。。