思えば遠くへ来たものだ
今日、幼い頃に育った場所を
画面越しに見てしまった。
軽い気持ちだったのに、
そこに映っていた景色は
もう私の帰れる場所ではなかった。
道も、空気も、
時間の流れも変わっていた。
住んでいた家の跡地は
荒れたまま残っていて、
誰にも思い出されない時間が
そこに積もっていた。
胸が詰まった。
声が出なかった。
あの頃の寂しさが
そのままの温度で戻ってきた。
小さな手で握っていた感触、
ゴムの匂い、
閉じ込めていた苦しさ。
幼い私は
誰にも助けを求められず、
ただ耐えていた。
生きることが怖かった。
大人になれば
楽になると思っていたのに、
人生は何度も
終わりを見せてきた。
余命宣告。
一度ではない。
その言葉を聞くたび、
世界の音が遠くなり、
私は透明になった。
“ここまでかもしれない”
その感覚を
何度も味わった人間だけが知っている
静かな絶望。
それでも
私は生きている。
不思議なほどに。
五年前、
この地に来た。
呼ばれたように来た。
寂しくて、苦しくて、
天へ行くのか
この世に残るのか
その境目に立ちながら
どうにか踏みとどまった。
ここで出会った人たちが
私をつないだ。
差し出された手。
何気ない言葉。
温度のある愛。
一人だったら
私はもういない。
それは事実だ。
初めて
生きていて幸せだと
思えた場所が
ここだった。
だからこそ
残りの時間を考えると
涙が止まらなくなる。
余命という言葉は
消えない。
いつも
静かに隣に座っている。
私はそれを見ないふりをして
今日を生きているだけだ。
あとどれくらい
誰かの役に立てるのだろう。
あとどれくらい
ここにいられるのだろう。
怖い。
正直に言うと
とても怖い。
まだ生きたい。
まだやりたいことがある。
まだ
あなたと話したい。
それでも時間は
待ってくれない。
だから私は祈る。
どうか
この残された時間が
誰かの温度になりますように。
私の命が
無駄に消えませんように。
もしこの文章を読んでいるあなたがいるなら、
どうか後回しにしないでほしい。
命は
想像よりずっと
脆い。
私は今、
ここにいる。
でも
永遠ではない。
だから
生きているうちに
繋がってほしい。
遠慮しないでほしい。
あなたの声を
今、聞きたい。
共に笑って、
共に泣いて、
生きた証を
少しでも残したい。
それができたなら
私は救われる。
思えば遠くへ来た。
何度も終わりを見せられながら、
ここまで来た。
奇跡みたいな時間の上に
私は立っている。
私がいる限りは――
最後の一秒まで、
あなたと
精一杯、生きたい。
どうか
この時間を
一緒に使ってほしい。