今日もアズキは、
お気に入りのベンチの上で、のんびりしておりました。
春の陽射しは優しいですね。
風も穏やか。
花たちも、気持ち良さそうに揺れている。
そんな静かな時間の中――
ひらひら。
小さな蝶々が、花の中へやって来たのです。
するとアズキ。
さっきまで眠そうだったのに、
急に目が真ん丸になる。
「むっ……何者じゃ?」
そんな顔で、蝶々を見つめ始めるのです。
蝶々は逃げません。
まるで、
「今日は遊びに来たよ」
そう伝えているみたいに、
花から花へと舞っていく。
するとアズキも、
ゆっくり前足を伸ばす。
でも――
捕まえない。
本気ではないのです。
ただ、遊んでおる。
蝶々が動けば、
アズキの目も動く。
蝶々が止まれば、
アズキも静かになる。
その姿が、なんとも優しい。
自然の中には、
言葉なんて必要ない時間がありますね。
蝶々も、
アズキが怖くないことを知っている。
アズキも、
蝶々が春を運んできたことを感じている。
だからでしょうか。
庭全体が、
どこか柔らかい空気になるのです。
人間は忙しいですね。
時間に追われ、
考え事をして、
スマホを見て、
焦って生きている。
でもアズキは違う。
蝶々が来れば、
ただ蝶々を見つめる。
風が吹けば、
風を感じる。
眠たければ、
眠る。
その姿を見ていると――
「生きるって、本当はこういう事なのかもしれんなぁ」
そんな事を思わされます。
今日もアズキは、
花の中で蝶々と遊んでおります。
春を、ちゃんと感じながら。
