夜とは、
不思議な時間です。
人の声が消え。
現実の音が静まり。
昼間には見えなかったものが、
静かに浮かび上がってくる。
私は時々、
思うのです。
人間は、
“思考”で生きすぎると、
魂の立ち位置を見失うのだと。
本来――
魂が先にある。
魂が方向を示し。
思考は、
そのために使うもの。
けれど現実では、
いつの間にか逆転してしまう。
思考が主となり、
魂が奥へ押し込められていく。
不安。
恐れ。
執着。
比較。
損得。
未来への焦り。
過去への後悔。
思考は、
次から次へと言葉を生み出し、
人間を支配していく。
すると人は、
分からなくなる。
「自分は何のために生きているのか」
「本当は何を望んでいるのか」
「なぜこんなにも苦しいのか」
それは――
魂が、
本来の立ち位置からズレてしまっているから。
でも、
魂は消えません。
どれだけ思考に押し潰されても、
魂は静かに存在し続けている。
まるで――
深い霧の向こうから、
人間の自分を見つめ続けているように。
そしてある時、
人は“静寂”に触れる。
大きな絶望の後かもしれない。
涙が枯れた夜かもしれない。
命の怖さを知った瞬間かもしれない。
愛を失いそうになった時かもしれない。
その時――
暴れていた思考が、
ふっと静かになる。
すると、
奥の方から、
何かが戻ってくる。
言葉ではない。
音でもない。
でも確かに感じる。
「あぁ……
ここだったのか」
という感覚。
魂が、
人間としての立ち位置を戻し始める瞬間です。
その中で――
魂は、
静かに“人間のあなた”へ近づいている。
思考に押し潰され。
不安に飲み込まれ。
本当の立ち位置を見失っている、
あなたへ。
「もう、
思考だけで生きなくていい」
そう伝えながら。
すると人は、
少しずつ変わり始める。
焦らなくなる。
無理に戦わなくなる。
比べなくなる。
証明しようとしなくなる。
そして――
魂が前へ出る。
思考は、
静かに後ろへ下がる。
人の目が変わる。
言葉が変わる。
空気が変わる。
同じ景色なのに、
世界そのものが違って見え始める。
私は思うのです。
神秘とは、
特別な奇跡だけではない。
空に光が現れる事でも。
不思議な現象を見る事でもない。
本当の神秘とは――
魂が、
本来の立ち位置へ戻る事。
思考に押し潰されていた人間が、
再び魂と重なり始める事。
それこそが、
人間にとって最も深い神秘なのではないでしょうか。
夜空を見上げた時。
静かな風を感じた時。
誰もいない部屋で、
ふっと涙が流れた時。
その瞬間にも――
魂は、
静かに人間のあなたへ触れているのかもしれません。
「もう大丈夫」
「戻っておいで」
そう伝えながら。
そして今日もまた、
どこかで誰かの魂が、
静かに人間としての立ち位置を戻し始めている。
気づかれぬまま。
静かに。
でも確かに――
魂は、
あなたの中で目を覚まし始めているのです。
